目頭切開の修正|切りすぎ・傷跡を治すには?名医が教える時期とダウンタイムを医師が解説
目頭切開の手術後に「思っていた仕上がりと違う」「傷跡が目立つ」「寄り目っぽく見える」と感じ、修正を検討する方は少なくありません。しかし、目頭切開の修正手術は初回よりも難易度が高く、正確な技術と経験、慎重な判断が求められます。
この記事では、目頭切開の修正が必要になる原因や主な修正方法、リスク、相談の流れをわかりやすくまとめました。焦らず、専門医に相談する際の参考にしてください。
1.目頭切開の修正とは

目的・仕組み
まず、一般的な目頭切開術(蒙古ひだを切開・剥離・再配置して目頭の印象を変える手術)について簡単に整理します。
目頭切開は、蒙古ひだと呼ばれる目頭側の皮膚のかぶさりを調整し、黒目の見える範囲や目と目の距離、目元の印象を整える手術です。
皮膚をデザインに沿って切開し、余分な組織を処理して縫い合わせることで、目頭の形を変化させます。わずかな切開でも顔全体の印象が変わるため、事前のシミュレーションとデザインがとても重要な手術です。
修正が必要になる背景
目頭切開を受ける事で離れ目の改善や目元が大人っぽい印象に近づくという効果がある一方で、「不自然な寄り目になった」「左右差が気になる」「傷跡が目立つ」「思っていたイメージと違う」などの理由から、修正を検討される方がいらっしゃいます。

ダウンタイムの経過とともに傷や腫れが落ち着くにつれ、初めて仕上がりが気になってくることもありますし、時代のトレンドやメイクの変化で、デザインが気に入らなくなってしまうケースなどもあります。
「修正」と「再手術」の違い
「修正」は、目頭の形や傷跡を部分的に整えたり、わずかに戻したりする微調整を指す言葉です。一方「再手術」は、前回のデザインを大きく変更したり、切開ラインを含めて一からやり直したりするような、より大きな変化を求める場合になります。
実際には、どこまでの変化を目指すか、残っている組織の状態などにより、適切な方法を医師と相談して決めていきます。
修正できる/できないケースの判断基準
修正の可否は、残っている皮膚や粘膜の量、傷跡の硬さ(瘢痕化の程度)、前回の切除範囲、経過期間などによって変わります。
わずかな開きすぎや傷跡であれば、デザイン変更や縫合ラインの工夫で改善が期待できることもありますが、組織が大きく切除されている場合は「完全に戻す」ことが難しい場合もあります。
診察で状態を詳しく確認し、現実的に可能な範囲を共有することが大切です。
初回術式による修正難易度の違い
目頭切開はZ法・W法など手術方法がいくつかあります。
修正をする場合、前回の手術で用いられた術式や皮膚の切除量、縫合の方向によって、修正の難易度が変わります。
例えば、皮膚の切除量が少なく、縫合ラインが自然なシワに沿っているケースでは、デザインの微調整が比較的しやすいことがあります。一方で、組織の切除が大きい、瘢痕が硬く広がっている、何度も手術を繰り返している場合などは、再配置できる皮膚が限られ、修正の選択肢が狭まることがあります。
2.【パターン別】目頭切開の修正が必要なケースと対処法
目頭切開の修正相談は、大きく分けて「①変化が物足りない」「②切りすぎて元に戻したい」「③傷跡・感染トラブル」の3つに分類されます。それぞれの原因と具体的な対処法を解説します。
パターン①:変化が物足りない・後戻りした
「勇気を出して手術したのに代わり映えしない」「最初は良かったが、時間が経ったら元に戻った気がする」というケースです。
原因
控えめなデザイン:
自然な仕上がりを優先しすぎて、切開範囲が小さすぎた。
後戻り現象:
人間の治癒力により、切開した皮膚が縮もうとして元の形に戻ってしまう現象。適切な剥離処理がなされていない場合に起こりやすいです。
左右差:
片方だけ戻りが強く、バランスが崩れている。
対処法・修正術式
切開ラインの延長:
既存の傷跡を利用しつつ、さらに数ミリ切開を加えて蒙古ひだの切除範囲を広げます。
術式の変更(Z形成・W形成など):
単純な切開不足であれば、ひだの解除効果が高い「Z形成」などを追加で行い、しっかりと目頭を露出させます。
内部処理の強化:
皮膚表面だけでなく、後戻りの原因となる皮下のつっぱり(靭帯など)を適切に処理し直します。
パターン②:切りすぎて元に戻したい(過矯正)
「寄り目になった」「涙丘(ピンクの肉)が見えすぎて怖い」「キツイ顔になった」など、過度な切開による悩みです。修正の中で最も難易度が高いケースです。
原因
過剰な皮膚切除:
蒙古ひだを完全に無くしてしまい、西洋人のような不自然な目頭になっている。
デザインミス:
顔全体のバランス(目と目の距離)を無視して切開してしまった。
加齢変化:
年齢とともに目頭の皮膚が薄くなり、昔の手術跡が目立ってきつく見えるようになった。
対処法・修正術式
蒙古ひだ形成(再建):
「逆Z形成」や「V-Y法」を用います。周囲の皮膚を移動させて、失われた蒙古ひだを人工的に作り直します。
VY法による閉鎖:
開きすぎた目頭を閉じるように皮膚を縫い合わせ、涙丘の露出を抑えます。
【注意点】:
一度切り取った皮膚は戻ってこないため、「完全に元通りの目」に戻すことは困難です。「不自然さを緩和する」「きつい印象を和らげる」ことが現実的なゴールとなります。
パターン③:傷跡・感染などのトラブル
「傷跡が白く凹んでいる」「ボコボコしている」「感染して腫れている」など、見た目の美しさや医学的な問題が生じているケースです。
原因
縫合技術の不足:
縫い目が粗い、皮膚の断面がずれている。
体質(ケロイド・肥厚性瘢痕):
傷跡が赤く盛り上がりやすい体質。
感染:
術後の不衛生や免疫低下により、傷口に菌が入って化膿している。
対処法・修正術式
瘢痕(はんこん)切除・再縫合:
目立つ傷跡(白い線や凹み)を切り取り、顕微鏡レベルの丁寧さで再度縫い合わせます。ジグザグに縫うことで傷を目立ちにくくします。
保存療法(レーザー・ステロイド):
傷の赤みや盛り上がりが強い場合は、すぐにメスを入れず、ステロイド注射やレーザー治療で傷を落ち着かせることを優先します。
【緊急】感染治療:
強い痛み、熱感、排膿がある場合は修正手術ではなく、抗生剤投与や排膿処置などの感染治療が最優先です。直ちに手術を受けたクリニックか近隣の医療機関へ相談してください。
3.修正手術で用いられる主な術式
修正手術では、以下の術式を組み合わせて行います。
Z形成法(および逆Z法)
皮膚をZ字型に入れ替える方法です。皮膚の切除量が少なく済むため修正に応用しやすく、目頭を広げることも、逆に閉じる(蒙古ひだを作る)ことも調整しやすい術式です。
V-Y法(Y-V法)
V字に切開してY字に縫合する(またはその逆)ことで、皮膚を前進・後退させる方法です。わずかな距離の調整や、蒙古ひだの再建によく用いられます。
単純切除・再縫合
古い傷跡部分のみを取り除き、丁寧に縫い直す方法です。傷跡修正で主に用いられます。
4.修正のタイミングとリスク・限界
修正に最適な時期
原則として、初回手術から「3ヶ月〜6ヶ月」以降に行います。 術後早期は組織が硬く(瘢痕化)、赤みもあるため、この状態で再手術をすると、正確なデザインができず、傷跡がさらに悪化するリスクが高いためです。 ※ただし、感染などのトラブル時は直ちに対処が必要です。
修正に伴うリスク・限界
-
期間:術後2日〜3日目 泣きはらしたような腫れが出ます。修正手術の場合、癒着(ゆちゃく)を剥がす操作が入るため、初回よりも腫れが強く出ることがあります。 内出血が出た場合は、紫色から黄色へと変化し、2週間程度で消失します。
-
過ごし方: 抜糸までは糸がついている状態です。伊達メガネやフレームの太いメガネを使用すると、目元の腫れや糸をカモフラージュしやすくなります。
-
抜糸:術後5日〜7日目 このタイミングで糸を取り除きます。
-
メイク:抜糸の翌日から可能 アイメイク(アイライン、アイシャドウ)は抜糸の翌日から可能です。傷跡の赤みをコンシーラー等で隠せるようになるため、この時期から仕事や学校へ復帰される方が多いです。
-
赤み:1ヶ月〜3ヶ月 切開したラインの赤みは、初回よりも長く続くことがあります。数ヶ月かけて徐々に白く、目立たなくなっていきます。
-
硬さ(拘縮):術後1ヶ月目前後 傷跡が一時的に硬くなる時期(拘縮期)があります。皮膚が突っ張る感じがしたり、ボコボコして見えることがありますが、これは治癒過程の正常な反応です。3ヶ月〜6ヶ月かけて徐々に柔らかく馴染んでいきます。
完全には戻らない:
特に「切りすぎ」の修正の場合、新たに蒙古ひだを作っても、生まれつきのひだと全く同じ質感・形状にするのは困難です。
新たな傷跡:
修正手術には新たな切開が必要です。以前の傷を利用しますが、切開線が複雑になる可能性があります。
左右差:
左右の癒着度合いや皮膚の伸び方が異なるため、微細な左右差が残る可能性があります。
目頭切開修正のダウンタイムと術後の経過
修正手術は初回の手術に比べて、組織が硬くなっている部分を操作するため、腫れや赤みがやや長引く傾向にあります。仕事復帰やメイクのタイミングなど、具体的な経過の目安を知っておくことで、安心して手術に臨めます。
術後の腫れ・内出血のピーク
抜糸・メイク開始のタイミング
傷跡の赤みと硬さ(拘縮)
5.信頼できる医師・クリニックの選び方
目頭切開の修正は、美容外科手術の中でも非常に専門性が高い分野です。以下のポイントをチェックしてください。
「修正手術」の症例が豊富か
通常の目頭切開だけでなく、「修正」「蒙古ひだ再建」の症例写真があるかを確認しましょう。
デメリットを説明してくれるか
「絶対元に戻せる」「傷は消える」と断言する医師は要注意です。「ここまでは改善できるが、ここは残る」と限界点を正直に話す医師が信頼できます。
カルテや過去写真を持参する
他院修正の場合、術前の顔立ちや、いつどのような手術をしたかの情報が非常に重要です。可能な限り過去の資料を持参すると、より精度の高い診断が可能になります。
まとめ
目頭切開の修正は、現在の悩みが「変化不足」「切りすぎ」「トラブル」のどれに当てはまるかによって、アプローチが全く異なります。
変化が足りない場合は、再切開やZ形成で追加効果を狙う。
切りすぎた場合は、蒙古ひだ再建で印象を和らげる(ただし完全には戻らない)。
傷跡やトラブルは、状態に応じて再縫合や保存療法を選択する。
いずれの場合も、組織の状態を見極める高度な判断力が必要です。一人で悩まず、修正経験の豊富な専門医に相談し、シミュレーションを行うことから始めましょう
目頭切開の修正に関するよくある質問
Q. 他院で受けた手術ですが、詳細がわからなくても修正できますか?
はい、可能です。前回のカルテや紹介状がなくても問題ありません。 ただし、手術前の元の目の状態がわかる写真(スナップ写真やスマホの自撮りなど)や、前回の手術直後の写真などがもし残っていれば、診察の際にぜひお持ちください。内部の状態を予測する大きな手助けとなります。
Q. 片目だけ形が気に入らないのですが、片目のみの修正は可能ですか?
はい、片目のみの修正も可能です。 「右目に合わせて左目を修正したい」といったご要望は多くいただきます。左右の目の開きや蒙古ひだの被さり具合を見極め、できる限り左右対称に近づけるデザインをご提案します。
Q. 修正手術をすれば、傷跡は完全に消えますか?
残念ながら、一度切開してできた傷跡を「完全に消す(無かったことにする)」ことは現代の医療ではできません。 修正手術の目的は、目立つ傷跡(凹みや白い線)を切り取り、皮膚のシワやラインに沿って丁寧に縫い直すことで、「他人が見ても気にならないレベルまで目立たなくする」ことです。
Q. なぜ修正手術の料金は、初回手術よりも高いのですか?
修正手術は、初回の手術に比べて極めて高度な技術と判断力が求められるためです。 一度手術された部位は、皮下組織が癒着していたり、瘢痕化して硬くなっていたりします。それらを丁寧に剥離し、限られた皮膚で正常な形を再構築するには、初回手術の何倍もの時間と、専門的な知識(形成外科技術)が必要となるため、一般的に料金設定が高くなっています。
Q. 目頭切開を戻す(蒙古ひだ形成)と、目は小さくなりますか?
はい、目頭を閉じる(蒙古ひだを作る)修正を行うと、物理的に目の横幅は狭くなり、両目の間隔(内眼角間距離)は広がります。 しかし、「切りすぎてキツイ目」「不自然な寄り目」が解消されることで、結果として「優しい印象の大きな目」に見えるようになるケースも多くあります。シミュレーションでバランスを確認することが重要です。

