【院長コラム】美容医療は魔法ではない。後悔しないための「リスクとの向き合い方」
昨今、SNSやインターネットを開けば「手軽に劇的に変われる」「ダウンタイムなしで美しく」といった、美容医療の華やかな情報があふれています。確かに美容医療は、長年のコンプレックスを解消し、より前向きな人生を歩むための素晴らしい選択肢の一つです。
しかし、美容医療は決して「魔法」ではありません。メスや針を体に直接入れる「医療行為」である以上、光(メリット)の裏には必ず影(リスクや合併症)が存在します。今回は、美容外科医の視点から、理想の姿を手に入れるために不可欠な「リスクとの向き合い方」についてお話しします。
「100%の安全」や「絶対の確率」は存在しない
カウンセリングの際、「失敗する確率は何%ですか?」「絶対に安全と言い切れますか?」とご質問される方がいらっしゃいます。少しでも安心したいというお気持ちは痛いほど分かりますが、人間の体は工業製品ではありません。皮膚の厚さ、骨格、体質、ライフスタイルは一人ひとり異なり、「感染率〇%」といった画一的な数字で個人のリスクを正確に測ることは不可能なのです。
例えば、鼻の手術において人工物(プロテーゼや吸収性プレートなど)への不安から、ご自身の組織(耳介軟骨や肋軟骨)を使用する術式を選択したとします。確かに自家組織は人工物に比べてアレルギーや露出の懸念が低く、安全性の高いアプローチです。しかし、それでも吸収による後戻りや変形、感染などの合併症リスクが「ゼロ」になるわけではありません。
医療の不確実性を前に、「数字」や「絶対の保証」に執着してしまうと、医療の本質を見失うことになります。万が一、術後に少しでも思い通りにいかないことが起きた際、「絶対と言われたのに」という深い後悔や不満につながってしまうのです。
どんな些細な処置にもリスクは潜んでいる
「メスを使わず切開しないから安全」「注射だけだから簡単」というイメージを持たれがちですが、これも大きな誤解です。
例えば、傷跡の修正やボリュームダウン目的で使用されるケナコルト(ステロイド)注射という一見手軽な処置であっても、薬剤への反応によっては周囲の組織の萎縮や、局所的な陥凹(へこみ)といった不可逆的な変化をもたらすリスクが潜んでいます。
どのような軽微な処置にも合併症のリスクは存在するという事実を正しく理解し、そのリスクを自分の意志で引き受ける覚悟を持つことが求められます。
「元に戻せる治療」と「戻せない治療」という判断基準
もし、リスクに対する不安がどうしても拭いきれない場合は、「可逆性(元に戻せるか)」を基準に治療を選ぶのも一つの賢明な方法です。
万が一結果に満足できなかった場合や、術後に不安になってしまった場合に、抜糸などで比較的容易に原状回復できる「可逆的な治療(二重の埋没法など)」にとどめておくことをお勧めします。
一方で、骨や軟骨の切除、組織の移植を伴うような「不可逆的な治療(完全には元に戻せない治療)」を受けるには、それ相応の覚悟と、担当医との強固な信頼関係が不可欠です。「ミリ単位で完璧な理想通りにならないと許せない」「少しでもリスクがあるなら怖い」という迷いがあるうちは、大きな手術には踏み切るべきではありません。
手術を受けるか迷ったときの「正しい立ち止まり方」
美容外科や美容皮膚科などの「自由診療」は、病気を治す保険診療とは違い、生きていくうえで必ずしも必要な医療ではありません。しかし、保険診療の外科手術と全く同じように、感染などの合併症や「自分の希望とは違う仕上がりになる」といったリスクは等しく存在します。
だからこそ、「自分がどう変われるか」という前向きな期待よりも、治療のリスクや合併症の確率が一番に気になってしまう方は、手術をやめた方が良いと断言できます。
カウンセリングでリスクを聞いて強い恐怖を感じた場合や、ご自身が持ち込んだ理想の画像と現実的な外科的限界とのギャップに妥協できないと感じた場合は、「今は手術を見合わせる」という選択が最も正しい答えです。
美容外科医の最大の役割は、ただ希望通りに手術をすることではなく、医学的見地から「やらない方がいい」と明確にブレーキをかけることでもあると考えています。
最後に
コムロ美容外科では、施術のメリットだけでなく、起こりうる合併症やリスクも決して隠すことなく正直にお伝えしています。それは、患者様に過度な恐怖を与えるためではなく、ご自身の体と真剣に向き合っていただくためです。
患者様が医療の限界を理解し、心から納得してリスクを受け入れる覚悟を持てた時にのみ、私たちは持てる技術のすべてを提供し、理想の実現を全力でサポートいたします。美容医療を人生の真のプラスにするために、まずはご自身の不安やリスクと冷静に向き合ってみてください。

