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性同一性障害(GID)のホルモン療法

性同一性障害(GID)のホルモン療法

性別違和・性別不合・性同一性障害(GID)とは

性別違和・性別不合・性同一性障害(GID)とは、簡単にいえば、体の性と、こころの性が一致しないことを指します。最近の研究で、体の性は染色体によって決定されますが、心の性は、染色体とは別のところで決定されるということがわかってきています。
心が女性で体が男性の場合にはMTF(male to female)、逆に心が男性で体が女性の場合にはFTM(female to male)と呼ばれます。

性別違和・性別不合・性同一障害(GID)のほとんど方がまず行う治療は、ホルモン治療です。性ホルモンを注射するだけで、睾丸(精巣)切除をおこなわなくとも女性化が期待できたり、豊胸術を行わなくとも胸のふくらみが期待できる治療です。
しかしながら、女性ホルモンを長期摂取していると男性の不可逆の不妊化が起こったりと、治療を開始するにあたり、リスクを理解していただくことが重要です。当院では、ホルモン療法のメリット・デメリットをしっかりと説明させていただき、必要かどうかを考えていただいた上で、治療を行っています。

性別変更とホルモン療法

GIDホルモン療法をされている方が、どこをゴール地点にするかは、人によって様々です。 容姿やメンタルの完全な女性化、男性化も憧れでしょうが、戸籍上の性別変更もGID治療においては一つのゴール、目標ではないでしょうか。
しかしながら、戸籍上の性別変更の条件だけは、法律によって厳格に定められていました。 従来は、GIDガイドラインが定める性別変更の要件として下記の5つを満たすことが必要とされていました。

性別変更を認める要件

  • 18歳以上
  • 現在結婚していない
  • 未成年の子供がいない
  • 生殖腺・生殖機能がない
  • 変更後の性別に似た外観

④、⑤をみたす性適合手術を日本国内で行うには、精神科医師2名の診断書が必要とされてきました。しかしながら診断書をもらっても、日本国内で性別適合手術を行える医療機関が少なくハードルも高かったため、国外で手術される方が圧倒的に多いといわれていました。
しかしながら2023年、性別変更の要件として手術を強制することの是非が争われた裁判で、最高裁は、「生殖器や、外観の変更のために手術を強制するのは憲法違反」と④を憲法違反とする判決をしました。
また、⑤の外観の変更については、広島高裁で2024年7月に「当事者がホルモン治療等で女性的な体になっていることから手術なしでも⑤の外観要件は満たされる」という判決が下りました。 ④、⑤ともに憲法違反との判断がされたため、今後の流れとして性別の変更に手術は必要とされなくなるようです。

性別の変更は希望せずに、容姿、メンタルの治療を希望される場合

GID治療では、ホルモン療法は、手術をする、しないにかかわらず必要です。 男性ホルモンは睾丸で、女性ホルモンは主に卵巣と、ごく少量が体脂肪から生成されます。そのため、生殖器を切除しても、必要とされる男性ホルモン、女性ホルモンは不足するため、MTF、FTMいずれの場合でも性ホルモンの定期的な投与が必要となります。

性別の変更を希望される場合

先ほど説明した通り、身体や金銭的に負担が重い性適合手術は、今後、必ずしも必要とされない流れになると思われます。しかしながら、手術を行わずに性別変更を裁判所に請求する場合には、性ホルモン投与歴や、精神科の診断書など、性同一性障害を証明する書類や、これまでのホルモン治療歴が必要となってきます。そのため、性ホルモン投与治療はされたほうがいいでしょう。

コムロ美容外科のGID治療の特徴

1.ホルモン血液中濃度の測定できます
GID療法は身長、体重、性別、年齢によって、効果の度合いや発現のタイミングは変わってきます。人によって必要なホルモン注射量は変わってきますが、比較的早期に症状が出る、性格の変化や性欲の低下、生理の停止などの症状が実感できなければ、ホルモン量が不足している可能性があります。コムロ美容外科では、客観的に判断する手段として、男性ホルモンの血中濃度測定をご希望の方に行っています。
2.オーダーメイド治療をこころがけています。
年齢、性別、体重によって、必要なホルモン量は違います。血液検査の結果と自覚症状を参考にしながら、注射の量や回数を増やしたり、内服を追加して皆様それぞれに見合った処方をします。
3.適正な注射間隔
注射の間隔は基本的に2週間以内で、3週間以上間隔があいてしまうと、注射前の状態にゆっくり戻っていきます。遠方に居住していたり、仕事が忙しくて治療間隔あいてしまう場合には、MTFの場合、エストロゲンの内服薬で補うことが可能です。

MTF (男性から女性へ:Male to Female)

適切な量の女性ホルモンの投与が行われた場合、注入開始後1~4ヶ月後くらいから、身体的変化が現れ始め、半年後くらいから不可逆の変化になります。エストロゲン投与でアンドロゲン(男性ホルモン)濃度の低下も起こり、体の女性化が現れてきます。

MTFの治療

当院ではMTFの治療に、プロギノンデポーを使用しています。症状や効果によって1回あたり1A~3Aを、肩もしくはお尻に筋肉注射をします。体内に入った女性ホルモンは肝臓でゆっくり分解され、3週間で体内から消失します。効果を維持する目的で2週間に1回での注射をお勧めします。
効果をできるだけ維持したい場合には、内服薬の女性ホルモン、プレマリン錠の併用をお勧めします。

プロギノンデポー

プレマリン錠0.625mg

効果

  • 毛穴、ニキビ、頭部の禿げの改善
  • 乳腺と胸部脂肪の増加によるバストアップ
  • 性欲の低下
  • 体格の女性化
  • メンタルの変化

FTM (女性から男性へ:Female to Male)

最近、女性でGIDホルモン療法を新たに始められる方が増えてきました。女性の場合は、体格が小柄なせいか、男性と比べて少ない注射量で実感できる効果が出ています。

客観的な効果測定方法として、血液中のテストステロン濃度測定を、希望者のみに行っているのですが、20代女性、月2回程度通院、1回あたり、テストステロン250mg注射といた平均的な患者様数名で、男性並みのテストステロン血液中濃度を維持できています。

テストステロン血液中濃度を維持ただし問題になってくるのが、テストステロン濃度上昇に伴い、ニキビができやすくなることです。原因としては、思春期のニキビと同じで、男性ホルモン分泌が増えるのに伴い、皮脂の分泌が活発になるためとされています。

テストステロン注射を減らさずに、ニキビを抑える方法としてお勧めなのは、イソトレチノインです。イソトレチノインには皮脂の分泌を抑える効果があり、ある一定期間内服を続けると、皮脂がでなくなる効果が半永久的に持続します。イソトレチノイン治療にあたり、定期的な血液検査が必要だったり、イソトレチノイン内服期間中は避妊をしないといけないのですが、GIDホルモン補充療法を行っている方には、あまり問題にはならないと思います。気になる方は、当院にご相談ください。

FTMの治療 

FTMや男性ホルモン補充療法に、今まで富士製薬のテスチノンデポー250㎎を使用してきましたが、同等薬の製造中止の影響で当院への割り当てが大幅に減ったため、入荷のめどが立たず、やむなく使用薬剤を変更することになりました。

新たに採用した男性ホルモンは、オーストラリア製 リアンドロン1000㎎4ccです。
一般的な男性ホルモン(テストステロン)注射薬の投与間隔が2週間に1回なのに対し、 リアンドロンは約3ヶ月(12週間)効果が持続 します。
 従来のテストステロン薬は、次回注射近くになると、体内の男性ホルモン枯渇症状が出ていましたが、リアンドロンは3か月間効果が持続し血中濃度が長期間保たれ、より効果が実感できます。

リアンドロン1000㎎

効果

  • ひげや体毛の増加
  • 声が低くなる
  • 月経停止
  • 体格の男性化・体重増加
  • 皮下脂肪の減少と内臓脂肪の増加
  • メンタルの変化

男性ホルモンを投与が十分な場合、月経が停止しますが、女性ホルモンが減少して起きる更年期障害のような症状(発汗・ほてり)が出ることはほとんどありません。
治療を継続していると、男性ホルモンの影響でひげや体毛が濃くなり理想の男性らしい体形になっていきます。

GIDのホルモン治療における副作用・リスク

肝機能の数値の悪化
投与したホルモンは肝臓で徐々に分解されますが、肝機能の数値が異常値を示すことがあります。投与休止が必要になることはほとんどありませんが、飲酒量が多く肝機能が悪い場合には、内科的治療が必要になることがあります。
生殖機能の障害、消失
MTF,FTMいずれの場合も、性ホルモンが生殖機能に影響を及ぼし、不妊になるリスクがあります。数か月のホルモン投与後にホルモン注射を終了しても、改善しない場合があります。

治療の費用

施術時間は筋肉注射を行う場合2~3分程度です。

【MTF】卵胞ホルモン(エストロゲン)注射 2,750円/1A 4,400円/2A 5,500円/3A
【MTF】エストロゲン内服薬 1シート(30日分)6,600円
【FTM】テストステロン注射 33,000円/1V(4cc)
採血 初回5,500円(肝機能、凝固系) 2回目以降2,750円
テストステロン血中濃度測定 2,750円(希望者のみ)
Q.ホルモン治療で癌のリスクは上昇しますか?

A.性ホルモンと関連性のある癌として、男性ホルモン(テストステロン)の場合は、前立腺がん、女性ホルモン(エストロジェン)の場合は、乳がん、子宮体癌、卵巣がんがあげられます。 更年期障害の患者に対して、それぞれ性ホルモンを投与した際の癌発生のリスクについて、欧米で研究データが出ています。
男性ホルモンの場合は、テストステロン補充療法を受けた男性の前立腺特異抗原(PSA)値が上昇したものの、がんの発症は確認されなかったという報告があります。
女性ホルモンの場合は、
1.乳がん: ホルモン補充療法(HRT)を受ける女性では、乳がんのリスクがわずかに上昇することが報告されています12。特に、エストロゲンとプロゲステロンを併用する療法(EPT)は、乳がんリスクを増加させる可能性があります。
2.子宮体がん: エストロゲン単独療法(ET)は、子宮内膜がんのリスクを増加させることがありますが、プロゲステロンを併用することでこのリスクは軽減されます。
3.卵巣がん: 一部の研究では、長期間のホルモン補充療法が卵巣がんのリスクをわずかに増加させる可能性が示唆されています。

男性に子宮や卵巣はなく、女性には前立腺がありませんので、GIDのホルモン療法において問題となるのは、MTFの乳がんのリスクのみとなります。
男性の乳がん症例も報告されていますので、心配な方は、超音波エコーやマンモグラフィーでの定期的な検診をおすすめします。
当院では超音波エコー装置を備え付けていますので、医師にご相談ください。
※乳がんは一般的に女性に多い疾患ですが、男性の乳房に発生すること(男性乳がん)もあり、乳がん全体の約1%を占めるといわれています。米国のデータでは、女性が生涯を通じて、8人に1人乳がんに罹患するのに対して、男性では生涯を通じて1000人に1人が乳がんに罹患するとされています。あらゆる年齢の男性に発生しますが、発症者が多いのは60~70代の年代です。

さらにその先を望まれる方へ

ホルモン注射療法の効果が出ると、外科的治療を行わなくても、精神面はもちろん、身体面でも上記のような異性化の特徴が出てきます。

しかしながら、戸籍上の性別変更まで行いたい場合には、裁判所での決定が必要になりますが、ホルモン注射療法を続けているだけでは認められることはありません。 裁判所の許可得るためには、性別を外観上区別している器官(臓器)、男性の場合は、精巣(睾丸)と陰茎(ペニス)、女性であれば、卵巣と精巣を、手術で取り除く必要があります。ちなみに、男性の場合、膣、外陰部形成、女性の場合、膣閉鎖、ペニス形成は必ずしも必要ありません

日本国内で性転換手術を受けるためには、精神科専門医2名の診断書が必要になってきます。

MTFの豊胸術と、FTMの乳腺切除術は、戸籍変更の条件には含まれず当院で手術が可能です。

当院では、診断書の発行と、乳腺切除術、豊胸術以外の性転換手術は行っていませんが、他の専門医への紹介をさせていただきますのでご安心ください。

睾丸、卵巣摘出術について、メリット、デメリット

GID治療では、MTFは女性ホルモン、FTMは男性ホルモンを投与しますが、もともと体内で分泌されている男性ホルモンや女性ホルモンが、ホルモン注射の効果を打ち消すため、必要投与量はどうしても多くなります。では、睾丸や卵巣を切除した場合はどうなるでしょうか?

メリット

  • ホルモン投与の効果が大きくなる
  • 長時間持続するようになる

デメリット

  • 抑うつ症状、意欲低下、骨粗しょう症などの更年期障害が出る可能性がある
  • 生殖機能が完全に失われ、こどもを作れなくなる

特に更年期障害症状緩和のため、GID治療を行いつつ、男性ホルモン、女性ホルモン補充療法が必要になる可能性があります。手術を考えておられる場合は、医師にご相談ください。